2002年にIOP英国物理学会の会員誌であるPhysics World誌の読者による投票で、「最も美しい実験」に選ばれた量子力学の「二重スリット実験:Double slit experiment」は、(株)日立製作所基礎研究所の外村彰によって行われました。実験自体は1989年に行われ、実験の図は2005年にProNASに掲載されたA. Tonomura, "Direct observation of thitherto unobservable quantum phenomena by using electrons," Proc. Natl. Acad. Sci. USA102, 14952 (2005) で見ることができます。検出器に到達した電子が10個、200個、6000個、40,000個、140,000個の時点で検出器と反応した電子のスポットの集積データを見ると、個数が少ないと離散的にランダムなスポットが観察されるだけですが、個数が多くなるにつれて徐々に量子力学の波動関数が予言するとされる二重スリット現象の確率分布が現れてきます。
この実験では電子をいきなり多数放出させても、同様な結果が得られます。すなわち、検出器には到達した電子によるスポットで、やはり同じような濃淡の縞模様の像が描かれます。この縞模様は波の干渉縞と似ており、電子は粒子ながら波動性をも示すとされています。
ただし、これらが波の干渉縞と寸分たがわぬ像であるかどうかはまだだれも確かめたことがありません。二重スリット現象の基礎的動力学過程、すなわち、電子や光子一粒ずつが検出器のどこにたどり着くかを量子力学により時々刻々予言することはできません。その意味するところとしては、量子力学の創始者のひとりであるボーアが主唱するコペンハーゲン解釈がひろく受け入れられています。コペンハーゲン解釈によれば、量子力学の波動関数は確率論的な現象の記述に使われる、ということになります。それに対してエヴェレットによる多世界解釈もありますが、いずれも解釈問題であり、量子力学による現象の記述の不可解さは現代においても残された課題であり続けています。
アインシュタインは「神はサイコロを振らない」と主張し、上に紹介したような量子力学の基礎的動力学過程にひそむ不完全さを指摘しました。ファインマンは彼の有名な量子力学の教科書で、これを「量子力学のミステリー」と表現しました。
立花により、上述の予知不能な「量子力学のミステリー(ファインマン曰く)」 として知られる二重スリット現象はQEDにより時々刻々予言できる、そのカギは双対コーシー問題を解くことにあり、そのアルゴリズムがアルファ振動子理論により与えられることを発見しました。
本研究の特徴、従来研究との相違等をまとめると以下のようになります。