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電磁現象としての原子・分子ダイナミクス、 すなわち、量子状態の時間発展の情報の全ては Heisenberg表示に基づく場の理論のハミルトニアンに包含されている。 任意の初期ケットを選びその時間発展を計算することにより その情報を取り出す。
原子核を場の理論の枠内で取り扱うためには、 シュレディンガー場(Lorentz対称性の既約表現としての場ではない)と するかこれを補う場の理論としての標準模型(構成粒子を全て記述する)しかない。
Rigged QED では、理論全体は場の理論(素粒子の標準模型)としておき、 低エネルギー物理的に興味ある光、電子、原子分子の量子現象を見る際に、 原子核ダイナミクスに関してはシュレーディンガー場として導入し、 それにスピン関数をくっつけるという記述を行う。[1]
光子を粒子として取り入れる場合は、量子力学的計算で用いられる断熱近似は使用できない。 仮に完全に原子核が局在化したなら、原子核の運動量の不確定性は無限大になり、無限に光子を放出する。 これでは、束縛状態中の光子の情報を失ってしまい、QEDに基づいた予言能力が失われてしまう。 原子核を量子的に取り扱って光子の状態を正しく記述することによってのみ、 束縛状態の正しい予言が可能となる。
Primary Rigged QEDでは電子場を2成分で展開し記述する。 これは非相対論の記述ではない。ただし、 非相対論的な系を対象とするときに取り扱いやすいという特徴は持っている。 2成分場としての記述は、よく知られた4成分Dirac場を2成分で記述する方法に基づいており、 Lagrangian中の相互作用の展開項の全ての次数を取り入れることでLorentz対称性を保ち、 情報を失うことはない。
物質カレントの定義域を分けて、各領域A、Mを定義。 このとき、どちらが大きい領域かであるとか、 Mは外部領域であるとかという決まりはなく、 解くべき問題に応じて適切に設定する。 例えば、分子ABで片方の原子Aの原子内を領域A、もう一方の原子Bを 含めたそれ以外の領域を領域Mにする。また、表面吸着分子を領域A、 吸着している結晶表面を含めたそれ以外の領域を領域Mにするなど、 多種多様に解析する問題に応じて適切にとることができる。
非平衡系の問題に対して、Rigged QEDシステムのA+M 理論を用いて自己無撞着に取り扱いが可能である。
理論全体のゲージ不変性も放射光子場のゲージ変換のみにより保証されている。
A+M理論においては全系を閉じたwell-definedなQEDシステムとして取り扱える。
すなわち電子・原子核が外部電磁場電流により駆動され、その反作用で自分自身が作り出す場
が自分自身(や周囲環境)のダイナミクスに複雑に絡んでくる量子ダイナミクスを、
我々はA+M理論で自己無動着に遂行可能である。
これに対して慣習的な取扱いでは、
物質と電磁場をあわせた全体を統一的なQEDシステムとして取り扱えていないため、
因果関係にある物理量が互いにwell-definedになっておらず、
各種物理量とそれを引き起こしている原因の分離が困難である。
[1]
QEDでは無限の自由度の存在による発散に対するくりこみが必要である。 各計算ステップで無限の自由度が存在するため、 全てを取り込んだ計算においては各ステップ毎に発散が生じる。 現段階のコードでは有限の自由度によって止まっているが、 今後のバージョンで各ステップ毎の量子効果による発散をくりこみにより除去する予定である。
無限の自由度による発散に加えて、相互作用による非摂動性のためにも演算子のくりこみが必要となる. これに対して全空間で積分したときの保存量が保存されるように場の再定義を行う。 系の保存量として電子・陽電子電荷,原子核電荷,系の全エネルギー, 系の全運動量,系の全角運動量がある。 現在のコード中にはこれらを全て取り入れられてはいないが、 電子・陽電子電荷,原子核電荷による波動関数くりこみを実行している。
その他のくりこみについては有限のカットオフスケールを用いることで対応している。 カットオフスケールより高いエネルギースケールの効果は、 束縛状態ではなく近似的に自由粒子として考えられるとして、 くりこまれた結合定数と質量を用いることにより取り入れる。 このくりこみの方針はNRQEDで行われる方法に準じている。[1]
GAMESS, GAUSSIANのアウトプットフォーマットを読み込んで、計算モデルとして使用できる。 計算コードは倍精度を仮定しているので、 倍精度出力をしたアウトプットファイルを用意する必要がある。
これらの計算結果のアウトプットは量子力学的状態であるので、 thermalizationの後にQED初期ケットとして使用可能となる。
今後、MOLPRO等の汎用計算コードへの拡張を予定している。 (closed time path formalism等で得られた波束や、 Yambo等のBethe-Salpeterの方法に基づいた計算コードの作る波束などへの インターフェースへの拡張も予定している。)
光子と物質場の間で運動量の受け渡しを正しく記述するため、 また束縛状態中の局所的な電流状態を正しく表現するためにも、 非相対論近似の場合であっても複素軌道を用いる必要がある。 モデルファイルを用意する際に、そのような軌道を用意する必要があるが、 QEDynamics内部で部分的に電流状態を作成するルーチンを実装している。